第8章 ◆田沼ノ寺
「 えーっと、お茶の葉はー・・・何処だろ?」
田沼に教えられた通り
台所にやってきたさなは
透明ガラス仕様の食器棚を開け
御盆に茶托と湯呑を二つずつ乗せ
急須の蓋を開けてから、お茶の葉を探す。
「 うーん・・・、見つかんないや。
・・・田沼さんに聞いてこよう。」
夏目の友人とはいえ初対面の人様の家で
ガサゴソと台所を漁るのも失礼である。
さなは探すのを諦めて台所を出ようとした
その時、
「・・・下ノ引き出し。」
「 えっ?」
ふと、耳元で聞こえる何かを示す言葉。
振り返るもそこには、何もなく。
ー・・・妖?
気配が、全く感じられなかった・・・。
夏目ほど敏感ではないが、ある程度の気配なら
察知できるさなは不審に感じていたが
「 ・・・。」
ー・・・もしかしたら、
怪我してる妖の事を知っているかもしれない。
さなは客間に戻ることを辞め、
耳元で囁かれた言葉に従い
下の引き出し と思われる食器棚の引き戸を開ける。
「 あっ、あった!」
そこには、引き戸を開けた真ん前に
筒状の缶に仕舞われたお茶の葉が置いてある。
それを手にしたさなは立ち上がり、
周りを見渡すと、
「 ありがとう、妖さん。
一つ聞きたいんですけど
姿を見せてくれませんか?」
ニッコリと笑って礼を述べたあとに
少し真剣な表情に変え、妖へ呼び掛ける。
・・・。
カタカタ・・・ カタカタ・・・
少しの間が空いて
御盆の上の茶托と湯呑が揺れ始める。
「 ・・・?」
その音に反応したさなが
そちらに視線を落とした瞬間、
「 ッ・・・!」
ずしりと重たい空気がその場を埋める。
そして、妖気に当てられ身動きが取れない
さなの背後より
薄く長細い腕がさなの胴体を絡め取った。
「 やッ!・・・な、に・・・?!」
ミシミシ、と
キツく絞まる腕に上手く声が出せない。
そして、耳元でフゥという妖の吐息が聞こえた後
「質問、答えタラ、
ハラワタ、クレル?」
そう、囁いた。