第8章 ◆田沼ノ寺
「此処なんだ。」
田沼の屋敷へと上がり、数分。
田沼がとある部屋の前で足を止め
後ろの二人に現場だという事を伝える。
「入ってもいいか?」
田沼に代わり夏目が襖の前へと進むと
一応、田沼に了承を得る為に
夏目が斜め後ろの田沼へ顔だけ向ける。
その問い掛けに田沼は言葉は発さずとも
一度だけ深く頷いた。
そして、ガラリと音を立てて
夏目が襖を目一杯開ける。
「・・・!
これは・・・、ひどい、な・・・!」
「 ・・・ッ」
現場を目の当たりにした夏目は目を細め、
顔を歪ませる。そんな夏目の後ろから
顔だけ出すよう中を覗くさなは瞬時に顔を背けた。
・・・その部屋は、
足の踏み場もない程に一面、荒れ果てている。
障子は破れ、本棚も倒れ
小さな机も脚が折れていて
整理整頓されていたであろう押し入れの中も
しっかりと破壊されていた。
そして、
その中でも一際目立つモノが一つ。
「血だ・・・。」
荒れ果てた地帯の中央部分
脚の折れた机に散らばった山のような本は
びっしょりと血で塗られていた。
「 ひどい、一体誰の・・・?
まだ、生きているんでしょうか。」
夏目の後ろで顔を背けていたさなが
一呼吸おいて夏目の横へ移動し
きっと無事ではないのであろう
その血液の本人へとさなが安否を心配する。
「あぁ、無事ではないだろうが
此処に居ないなら
何処かで、治療しているのかもしれない。
田沼、これは窃盗どころじゃ・・・。」
さなの言葉に夏目が答えると
田沼に事件の重さを再度確認しようと振り返るが
「・・・。」
「・・・田沼?どうした?」
「 田沼さん?」
顔色を無くし、目を見開きながら
立ち尽くす田沼へ二人は呼びかけるも
田沼のいつもの表情は消えている。
そして、
「・・・血、があるのか・・・?」
そう一言だけ、発した。