第8章 ◆田沼ノ寺
「待て!…さな!
きっとさなが思っている事とは違うんだ!」
ー…って、なんだこの
浮気がバレたかのような言い訳がましさは…。
夏目は自分で自分に引きながらも、
然程、進んでなかったさなまで追い付くと
その腕を掴んだ。
「 あの、私は何も見てないので大丈夫ですから!
お二人の幸せを願ってますので
本当、大丈夫です!」
腕を掴み振り向かせた瞬間に
必死に意味不明なことを発するさな。
「 はッ?!」
ー…一体なんの勘違いしてるんだ?!
その発言は明らかに夏目の想像の上をいっていた。
「ぶはっ!
あは、ぁはははは!!」
夏目とさなのやり取りを
夏目の後ろから眺めていた田沼が堪え切れずに
その場で吹き出した。
「 …?」
「田沼・・・?」
田沼の笑い声で二人の動きが止まる。
「ごめんごめん。
面白い子だな、夏目?
この子が例のさなちゃん、なのか?」
田沼はなんとか笑いを治めて
夏目とさなの間に入った。
「あぁ、田沼ごめん。紹介していなかったな。
俺の親戚のさなだ。
さな、こっちは俺の友人の田沼だ。」
夏目が二人に二人を紹介すると
「 えっと、
1年の望月さなです。」
さなは田沼に向けて軽く頭を下げる。
それに応えるように田沼も半歩ほどさなに近付き
「田沼要、です。よろしく、さなちゃん。」
そう言ってニコリと笑い
さなに片手を差し出した。
「 こちらこそ、よろしくお願いします。」
田沼につられ、さなもニコリと笑って
片手を差し出し二人は軽く握手をする。
「こりゃあ、西村が喚いている理由も分かるな。」
田沼がさなとの握手の手を解きながら
そう呟いた。
「「 …喚く?」」
その意味も分からずに二人は同じところでハモると
田沼に対して疑問符を放つ。
「…いや、こっちの話。」
田沼は表情を崩さず話を切り上げた。
ー…二人して鈍感か。
こりゃまた、ややこしい。