第7章 ◆花火祭り
そんな長い長い夜が更け
カーテンの隙間から朝陽が漏れ始めた頃
夏目は薄らと意識を戻し始める。
「ん、・・・もう、朝か…。」
ー全然眠れた気がしない…。
それもその筈、
妖たちの宴会に尽く付き合わされた夏目は
つい30分程前に寝始めたばかりなのだ。
「…ん?」
まだボーっとしている頭を起こしながら
夏目はふと自分の左手が動かないことに気づく。
そして、その原因を突き止める為
ボヤけている視界を左手に集中させ
視線を向けると、
そこには
「………さな…?」
夏目の左腕には何故か、
さなの頭が乗せられていた。
ーいつの間に…。
二人がこの体制になった経緯は分からずも
心地良さそうに静かに寝息を立てるさなを
夏目は暫く見つめていた。
その姿に気を取られていた為、さなが
布団すら掛けていないことに気付いたのは
少し後のこと。
「このままだと風邪を引いてしまうな。」
夏目はさなを起こさないよう
空いていた右手でさなの後頭部を支え
するりと腕を抜く。そして、
お酒の瓶と潰れている妖たちで散らかった部屋を
見渡しながら、溜め息を零すと
1度ドアまでの自分の足場を確保してから
さなの寝ている所まで戻り
そのまま慎重に横抱きにして
静かに部屋を出た。
「余程、疲れたんだろうな。」
動かしても起きないさなを見ながら
夏目は本音が零れる。
夏目の腕の中で小さく凭れ掛かり
夏目が歩く度にふわり、と揺れる
さなの少しだけ乱れた髪と浴衣の袂。
その姿にポッと顔を赤らめる夏目は
先程の花火の話を思い出していた。
「 そういえば、さなの気持ちを
聞いていないな・・・。」
そんな事を呟きながら、移動する。
夏目の部屋を出て階段側の左の部屋。
そこには
夏目の部屋と同じ広さの空部屋があり
そこがさなの部屋として使われている。
夏目はさなを抱えながらも器用に扉を開け
少量の荷物が置いてあるだけの部屋へ進むと
塔子さんが用意してくれたのであろう
綺麗に敷かれた布団へさなを寝かせた。