第1章 ◆少女の名
「やっぱり、あの子が……。」
足早に森への道を進みながら、
ニャンコ先生の収集してきた情報に耳を傾ける。
ニャンコ先生の話によると
3日ほど前にこの町へやって来た
望月さなという少女は
何故か、友人帳を持っていて
気配は俺の祖母、
夏目レイコそのものだという。
見た目に囚われない妖たちは
友人帳に載る自分の名に引き寄せられ
その少女を襲った。
その少女は
妖力は強くも、腕力は無く
怪我をしながらも
妖たちの名前の返還に応じているという。
……たったひとりで。
そう、その子は
俺のように自称〝用心棒〟である
ニャンコ先生のような妖を従えていない。
そんな転校してきたばかりの子が
誰に頼ることなく
身を削る想いをしているということが
俺にとっては耐え難いことだった。
かつての俺を見ているようで
行かずにはいられなかった。
ギュッと拳に力を込めると
俺は森への道を駆け出した。