第4章 俺がアイツで、アイツが俺で 【前編】
当然の様に夏美は口を全開にして、顔を赤くし全力で否定してきた。
「な、な、何言ってんのよ!?そんなわけないでしょ!」
全くよー、ホントは妬いてるくせに。
必死にムキになる夏美が面白くて俺はケラケラ笑いながらさらにからかい続ける。
「まーたまた。嫌よ嫌よも好きの内って言うだろ?」
「そんなの絶対違うし…!」
夏美はプイッとそっぽを向き両手を腰に当てる。
そんな彼女が微笑ましくて俺はまた彼女の顔を覗き込む。
「何が違うのかなー、夏美ちゃん?説明してみ?」
「もう、しつこい!!」
「ははは、夏美ちゃんってばムキになっちゃって、かっわいい〜」
「……んもう」
そうやって俺達がじゃれあっていると真ちゃんは流石に痺れを切らしたのか、俺のTシャツの襟を引っ張って練習を再開させようとした。
「…おい、さっさと練習するのだよ!こんな所でいちゃつくんじゃない!目が腐るのだよ!」
真ちゃんはいつもよりドスの効いた声で怒りを露わにする。おまけに強く引っ張られて息が苦しい。
「いで、いでで!真ちゃん、もうちょい優しくしてー!」
「あ、真ちゃん。助かった!カズ君をよろしくね〜、バイバイ!」
夏美は真ちゃんを止めようともせず元気良く別れを告げ、多恵ちゃんと一緒に帰って行った。