第3章 もう我慢できない… *裏
夏美は俺の手を握りながら、目を俯く。
「…あのね、私、昔付き合ってたボーイフレンドに無理矢理されそうになったの。だから。」
震えながら告白する彼女がいじらしく、言いかける彼女に構わず俺は包み込むように抱きしめた。
「…いいよ、付き合う前に辰也さんから聞いたんだ。」
「…嘘!お兄ちゃんが?」
夏美の顔は今俺の胸元にあるから見えねえけど、心底驚いてるはず。俺は震える声で彼女に囁く。
「…本当はずっとお前を抱きたくて仕方なかった。けど、お前の過去を聞いたら、それ以上に守ってやりたくて、辰也さんに超大事にするって誓った。なのに、俺…。」
そして夏美が俺の背中に手を回し、抱きしめ返してくれた。彼女は泣きそうな震える声で俺に言った。
「…カズ君はそれ聞いて、引かなかったの?ずっと心にしまったまま、付き合ってくれてたの?」
(バカだな、…そんなの決まってんじゃん。)
不安気な彼女を安心させるため、1度彼女の両肩を掴み、一旦胸元から放す。そして彼女の目をしっかり見て力強く言った。
「…あったりめーだろ!!全部ひっくるめて夏美が好きなんだ!!」
「…ホントに?別れないよね?」
(なんか話が飛んでね?)
突っ込みたくて堪らねーけど、それよりも夏美を安心させるのが優先だ。
俺は彼女の頭を撫でて、微笑みを浮かべると優しく囁く。
「ふ、バカだな。…別れるつもりなんて毛頭ねーよ。」
そして、夏美は更に涙をポロポロと零し、俺の胸元に抱きついた。
「…カズ君、カズ君!」
すすり泣く彼女の頭を撫で、優しく抱きしめ、背中をさする。
「…無理しなくていい。お前がそばにいてくれればいいから。」
しばらく夏美は泣きじゃくり、落ち着くまでずっと抱きしめていた。