第3章 もう我慢できない… *裏
「…ホントに?」
(真ちゃんに言われると更に説得力があるな、やっぱり。
それになんだかんだ言って真ちゃんは優しいんだから。)
だけど、真ちゃんは何故か私から目を逸らし、弱い声色で呟く。
「…あいつからずっと惚気話を聞かされてる身にもなってみろ。…いい加減うんざりなのだよ。」
「ちょっと!?一体、どうしちゃったの?」
明らかに様子が可笑しい彼を放っておけなくて、私は彼の服を掴もうとすると、彼に払い除けられてしまう。
「…真ちゃん。」
(あれ、私うざかった…?)
私が悲しげに言うと彼はヒヤリとしたのか、縮こまるように謝ってくれた。
「…すまない、氷室。」
「…ううん!きっと受験で気が立っちゃったんだね!」
私は自分にも言い聞かせるように作り笑いをしながら言った。
「…高尾はお前が思ってる以上にお前の事が好きなのだよ。だから、心配することないのだよ。」
そして彼はそそくさと去って行く。あのクリスマスの時を思い出しながら、私は呆然と立ち尽くした。
(…真ちゃんもああ言うんだから、きっと大丈夫だよね。けど、真ちゃん、一体どうしちゃったの?最近避けられてる気がしてならない。…私、なんかしたかな?)
そう、真ちゃんはカズ君と付き合い始めてからずっとあんな調子で私を避けている。付き合う前は結構突っかかてきたのに。
なんだか寂しくてしょうがなかった。
私はまた複雑な顔をしながらカズ君の家へ到着し、インターホンを押すとすぐにドアが開く。
「お、待ってたぜ。さ、上がって。」
カズ君がまるで犬のように私を心待ちにしてたのがわかる位の眩しい笑顔を向け、出迎えてくれた。
「うん。カズ君、お待たせ!」
カズ君の顔を見たら急に気持ちが明るくなり、途端に口元が緩む。自分が単純過ぎて呆れるくらいだ。
彼にエスコートをされるがまま、とうとう部屋に上がる。