第3章 もう我慢できない… *裏
過去の事があってお兄ちゃんは心配して聞いてくれてるのはわかっていたから、私は正直に答える。
「…ううん、まだだよ。」
そう、カズ君は今までキス以上の事を求めてこなかったの。
彼は約束通り、私の事をずっと大事にしてくれていた。いつもデートして、抱きしめ合って、キスするだけだった。
私としてはそれだけでも十分幸せだった。けど、カズ君は私を物欲しそうに舌を入れてくる事が何回かあった。
初めは戸惑ってカズ君の舌から逃げてたけど、次第に慣れていき、気がつけば心待ちにしてる自分がいた。
だけど、それ以上の事を求められたら、昔の恐怖が蘇るかもしれなくて、正直複雑だった。
目を俯いて答えた私をお兄ちゃんはいつものように頭を撫でて、優しく言ってくれた。
「そうか。付き合って1年も経つのに、彼大したもんだな。約束通り、夏美の事を本当に大事にしてるんだね。」
「お兄ちゃん…。」
(お兄ちゃんがそこまでカズ君を認めてくれるなんて…。)
私は目を見開きながらも、心底嬉しく思った。
友達に応援されるだけでも十分幸せだけど、お兄ちゃんのはやっぱり格別。
私は思わず顔が綻び、嬉しさと恥ずかしさが混じって顔と目頭が熱くなる。
「…ふふ。だってカズ君、私の事超大事にするって言ってたもんね。」
「…よかったな、夏美。」
「お兄ちゃん…。」
お兄ちゃんは私を包み込むように頭を撫で、優しく抱きしめてくれる。