第3章 もう我慢できない… *裏
ーSide 夏美ー
受験勉強でなかなか会えなくなっていた私達。でもなんとか時間を作って、今日カズ君の家で2人で勉強することになった。
(カズ君の家、初めてだから楽しみだな。)
このために早起きして、私は鼻歌を歌いながら昨晩寝かせていたクッキーの生地を取り出し色んな形にくりぬいていく。
それをオーブンに入れて焼き始めたところで誰が階段をおりて行く音が聞こえた。
それはお兄ちゃんだった。
彼と目が合い、お互いに微笑んで挨拶を交わす。
「夏美、何朝っぱらからクッキー焼いてるんだい?しかも楽しそうだね。」
秋田の陽泉高校に通ってたお兄ちゃんだけど、今年の春から大学生になり実家に帰ってきて、今はほぼ毎日顔を合わせている。
「あー今日は友達の家で勉強するの!」
お兄ちゃんに聞かれて、必死に誤魔化す私。だけど、長年一緒にいるから当然ばれてしまった。
「目、泳いでるぜ。…高尾君とだろ?」
(もう、鋭すぎ!)
言い当てられた私はお兄ちゃんから目を逸らし、赤面しながら首を縦に振る。
「…2人っきり?」
私はまた縦に首を振る。
「…もう、キス以上の事はした?」
お兄ちゃんに聞かれると友達以上に聞かれるより恥ずかしくて堪らなく、湯気が出るくらい赤面した。
私は昔、アメリカに居た頃に付き合っていた元ボーイフレンドに路地裏に連れて行かれ、強引に迫られ身体を好き勝手弄ばれた事がある…。
アレを無理矢理捻じ込まれそうになったとこでお兄ちゃんに助けられた。それでも汚されたことには変わりない。
当然心の傷は負ってしまったけれど、お兄ちゃんが助けに来てくれたおかげで身体の傷を免れたのが唯一の救いだった。
また更に追い打ちをかけるように学校で酷いイジメも受け傷は更に深くなっていき、立ち直るまで本当に時間がかかった。
もちろんカズ君に言えるはずがないよ……。