第13章 見つめる先にあるものは
赤葦
微笑む彼女の頬に手を添えた。
そのまま口づけしようとしたところで
冷静になり顔を横に振った。
彼女が名前を呼ぶ。
赤「すいません、焦りすぎました。」
ふるふると、首を左右に振る彼女。
藍蘭「でも、赤葦さんが、そういう、うん。
その、き、きす…とかしたいなら…どうぞ…?」
赤「何てことを言うんですか。」
ため息まじりに本心がこぼれた。
何言ってんだよこの人。
赤「ホント、襲いますよ。そんなこと言うと。」
その言葉を聞いて真っ赤になる藍蘭。
藍蘭「でも、赤葦さんが言うなら…。」
ホント何考えてるのこの人。
まだ、付き合い始めだから大丈夫とでも思ってる?
こんな絶好のシチュエーションで、
手出ししない男なんてないでしょ。
でも…。
ポンッと頭に手を乗せる。
赤「そんな大切なこと、こんな場所で
終わらせるつもりなんてないよ。」
ん、とだけ反応して顔を俯かせた。
赤「部屋、戻ろうか。藍蘭。」
目を見開いて、口をポカンと開けて、
びっくりした様に口を噤んで、
恥ずかしそうに顔を背けた。
表情がコロコロ変わって可愛い。
赤「何驚いてるんですか。
これから名前だけで呼びますよ。
もちろん敬語も外します。
藍蘭も一緒だからね。」
一瞬戸惑ったような顔をしたけど
また笑顔になって
藍蘭「うん、京治。」
俺が差し出した手を重ねた。
保健室の扉を勢いよく開けて、
赤「ってことなんで、手出さないでくださいね?」
と言い放つと、雪崩のように崩れ落ちる先輩たちを見て
驚いた藍蘭と
俺の一言にヤジを飛ばす先輩2人。
気にくわなさそうに見る後輩に目配せをしてから、
藍蘭の手を強く握りなおして走り出した。