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300Kmと0㎝

第13章 見つめる先にあるものは



藍蘭


「好きになってはくれないんですか」


そんなに見つめられると、どこを見ていいのかわからなくなる。

恥ずかしくてそっぽを向いて


「だいぶ昔から好きよ」


私にしては頑張りすぎてしまったかしら。


そう思った刹那、急に抱きしめられるものだから
とても驚いた。

それでも、喜びを含んだ落ち着いた声が聞こえて
硬直しかけた肩の力が抜けると、そのまま身体を預けた。


そっと添えられた手は私の目尻を拭って。

その暖かさに触れたくて手を添えた。

自分の手が冷たいのか、
彼の暖かさに吸い込まれる様に、
彼の体温に溶けていく。


思い出した様に目を閉じると、
固く誓った思いを吐き出した。

無意識に力が入る。

でも言葉がひとつ、ひとつと溢れるたびに、
また力が抜ける。

今、心底安心してるのがわかる。

黙って聞いてくれる誰かじゃなくて、
彼がいるからなのかもしれないけれど。

彼の表情が見たくなって、瞼を開けると
ほら、やっぱり。

すごく優しい顔をしてる。

言ってよかったと思うのは、
あなただけじゃないのよ?




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