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300Kmと0㎝

第13章 見つめる先にあるものは


赤葦

頬を伝いシーツを濡らす涙、涙痕。
暗いこの部屋に浮かぶ様な白い輪郭。
月明かりが妖艶に彼女を映す。

黙って見つめると恥ずかしそうに目を逸らす。

しかし彼女の言葉から出た言葉は
何より俺が望んでいたもので、
反射的に抱き起こしてしまった。

赤「言ってよかった。」

かすれる様な声だった。


先程キスしてしまったからだろうか。
触れたいという欲求が大きくなる。

目尻に浮かぶ涙を親指で拭うと、
彼女は柔らかく笑って頬に添えた手を
自身の手で包み込む。

今にも溶けそうな雪の様な冷たさが重なった。
その体温は、俺の中に混ざり合う。

ふと目を閉じた彼女はいう。

藍蘭「ほんとは、何も言わないつもりだった。」

言葉を選ぶ様に慎重に話す彼女。
重ねられた手に少しだけ力が入った。

藍蘭「もし言えてなかったら、こんな風にはならなかったのかもしれない。」

まっすぐこちらを見据えて、

藍蘭「私は幸せです。
噓偽りなんて何一つない今が」


ふっと笑って目を合わせた彼女につられる様に
俺もです、と笑い返す。


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