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300Kmと0㎝

第13章 見つめる先にあるものは


No side

彼を呼び止める叫び声と廊下を駆け抜ける力強い足音。

その"音"に耳を傾けていると、知らず知らずのうちに
表情が優しく緩んだ。

山「最近のツッキーはカッコ悪いよ!!!」

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第三体育館にて励まれる夜練に蛍は居ない。
光太郎が声をかけたらしいが、断られたらしい。

木「メガネ君、なんで断ったのかなぁー。
やっぱ、黒尾のせいだよなー」

黒「なんだよ、それ。木兎の限りないスパイク練のせいかもしれねーじゃん。」

木「挑発失敗の黒尾クンに言われたくなーい」

黒「なんだと⁉︎脳筋バカに、言われたかねーぞ!」

笑いながらボールの投げ合いをしている様子を
赤葦は何も口にせず黙ってその一連を眺めていた。

その隣には藍蘭が居る。
座りながらそれを見る2人の間に会話はない。
それを破ったのは赤葦の方だった。

赤「彼、何か言ってました?」

彼とは月島の事だろう。
特に目立たず、それが彼の通常運転だった。

藍蘭「いえ、特には。」

そうですか、と言葉を切ってから続けた。

赤「藍蘭さんは、何か変わりました?」

突然の言葉に、何を答えていいのかわからずに
困惑の表情を浮かべた。

赤「俺の事、どう思いますか。
この前の合宿から何か変わりましたか。」

考えがまとまらない藍蘭を見て、

赤「混乱、させてしまいましたね。」

そんな事はないと言葉を返す藍蘭に
俺は、と言葉を続ける。

赤「あの日した事は申し訳なく思っています。
でも、あの行動に嘘はありませんから。」

ふっと口元に笑みを浮かべた赤葦を見て思う。

藍蘭(私もあの言葉に嘘はないだろう。
でも、伝える事もないだろう。だから私は…)

喉まで出かかった言葉をのみこんだ。

赤葦が立ち上がり木兎らの呼ぶ声に応じて
小さく頭を下げ、走って行った。



少しだけウトウトとしていた藍蘭の耳に
地面を強く蹴る音と声が聞こえた。

かすかに聞こえるその声は、
先日浮かべた相棒とも呼べる彼の声。

こんな風に彼に対して声を荒げる事はあったのだろうか。


「プライド以外に何がいるんだ!!」


彼にしか伝えられない言葉。

力強い言葉に反して、藍蘭の心は穏やかだった。

安心した表情で瞼が閉じられた。
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