第12章 苦さと、甘さと
藍蘭
朝、焼け…?
目を開けた窓の外には、綺麗な雲海と朝日。
瞬きを何度かして、少しだけ目をさます。
まだ重い瞼を擦ろうとしたが、
手が上に上がらなかった。
左手に重ねられた、少し骨張った固めの
男の子の手。
もう男の子、なんて歳でもないのかなって思いつつ
彼の手に視線を戻す。
何百本も、何千本もサーブを打って、
ボールを拾って、スパイクで得点を重ねて、
誰よりもチームの為に戦ってきた、
大きくて頼もしいキャプテンの手だ。
なんで、こんな事をしたのかはわからない。
重ねられていた手を翻し、手をぎゅっと握る
すると応えるように少しだけ、
握り返されたような気がした。