第12章 苦さと、甘さと
菅原
「もう、大丈夫だよ。」
その一言は、永遠の別れを告げる様に思えた。
大袈裟すぎるかもしれない。
けれど、それくらい重い言葉だと思った。
小さかった君の手を引いたのは俺だけど
もう君の手を引く事はないんじゃないだろうか。
離れた熱は、まだ掌に残って苦しい。
好きだと伝えたい。
大好きだと抱きしめたい。
いつまでもその手を引ける男になりたい。
それが叶わないものと知っているから
余計に苦しむんだ。
「そう思わない?孝支。」
何の話だろう。
もう君の言葉も聞こえないくらい
心酔しちゃってんのかな。
藍蘭、
お前の心にあるひとは誰?
声にならない問いに、小さな手が
大きな俺に笑って手を振った気がした。