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300Kmと0㎝

第10章 一週間は終わりを告げる



藍蘭

藍蘭(バスの時間、迫ってる。)

清水と谷地は、バスの方でみんなの点検や、
荷物の最終チェックをしてくれている。

とうのわたしは今までいた部屋の片付けや、
確認をして回っていた。

藍蘭「あとはここだけ。」

男子部屋へ来て、時間を確認すると、ちょうどいい。
この調子だと、出発時間に余裕を持てる。

部屋の隅や窓際を見て確認する。

窓の外から声がして、下を覗いた。

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赤葦

赤「どうかしましたか。」

突然メールが入り、呼び出された。
差し出しは黒尾さん。

黒「藍蘭ちゃん、いいの?」

いいわけ無いじゃ無いですか。
こんなに辛い思いはしたことの無いくらい、
あの人を想っている。

赤「なんのことですか。」

黒「赤葦だけじゃ無い。そっちの木兎、
うちのリエーフ、烏野の人達。
……俺。」

赤「わからないのですが。」

自分でもわかってる。わかりきってる。
自分じゃどうしようも無いことも、
時間が解決するなんてものじゃ無いことも。

…自分以外の想いだってある事も。

黒「俺も、何を思ってお前にこんなこと言ってるのか
正直わかんねぇし、こんなこと言えるほど、
余裕も無い。俺、どうかしてんだよ。」

いつもの様に笑ってみせるが、
目の奥にある悲しみの感情は隠し切れていなかった。

赤「…俺も、ちゃんと考えれます。
黒尾さんに、言われなくても。」

こんな言い方しなくても、と自分で思った。
八つ当たりの様な気がした。

それでも彼は笑っていて、

黒「ま、お互い頑張ろーな。バレーも、彼女も。」

赤「はい。」


黒尾さんは返事を聞くと、正門の方へ向かっていった。


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藍蘭

誰かはわかっていたけど、その場にいようと思わなかった。

人の話を盗み聞きするのもどうかと思うし、
なんとなく、いたくなかった。

傍にいるわけではないが、彼を見ると最近は
あの柔らかな笑顔と共に、
あの時の彼の哀しそうな顔が浮かんでくる。
傷付けてしまった時の、あの顔が。


とにかく離れたくて、急いで確認すると、
部屋を出て、鍵を閉めた。




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