第9章 繋げる為と、戻れぬ様に。
黒尾
藍蘭「黒尾さん!け、研磨っ!」
反対から歩いてきた彼女は
俺の名前と躊躇しながら
研磨の名前を呼んで
藍蘭「ジャージ、ありがとうございました。」
と頭を下げた。
弧「ありがと。もう、大丈夫…?」
珍しく研磨が心配してる。
藍蘭「もう、平気です。」
この困った様に、目を伏せながら笑う理由を、
研磨は知っているんだろう。
黒(すげぇ、モヤモヤする。)
怒りとか嫉妬とかではない
何かが胸の中で渦めいている。
黒「先いくぞ、研磨。」
孤「あ、待ってクロ。じゃあね。」
小さく手を振る。
(なんだ、これ。研磨はなんでもないっ)
そんな風に思っていると、
藍蘭「黒尾さん!頑張ってください!」
ホッとした。
胸のモヤモヤが消えた。
(彼女は、俺の事も見ていてくれる。)
振り返ると、微笑を湛えながら
こちらを見ていた。
(やっぱ、好きだな。)
改めて自分の気持ちを確認して
黒「おう、藍蘭もな。」
と返して、また歩き始めた。
(今度は、大事にしなきゃいけない。)
自分の気持ちの押し付けではいけない。
彼女の気持ちがなければ、
只々虚しいだけで…。
顔だけ後ろを向くと、
もう彼女はいなくて。
「時間は、ない。」
合宿は永遠には続かない。