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300Kmと0㎝

第8章 虎視眈々



弧爪


クロのことはちゃんとわかっていたし、
彼女のことも、少しは分かっていた。

でも、名残惜しいと思ったのは、
あの温かさに、触れていたいと思ったのは、
確かに、俺だ。


空き教室。

特に意味があったわけじゃ無い。
ただ、場所が欲しくて来た場所に。

そこにいた彼女は、
あの華やかさはなくて、
今にも消えそうな光の様だった。

一滴の水が垂らされた様に、
想いは広がる。

(そういえば、名前……。)

あんなにも気になっていたのに、
名前すら知らなかったなんて、
笑ってしまう。

知ることよりも先に、
想いが生まれるなんて考えもしないこと。

帰る前に、なんて言わないよ。
今すぐなんかじゃなくていいんだ。

会えないからなんて関係無いんだよ。

なんてこと、柄にもなく考えて。


まぁ、嘘つくわけじゃ無い。
きっとそのうち彼女も、彼等も分かるはず。

はっきりしてるのは、
初めてクロも、味方じゃ無いってことで。

俺も、クロの思い通りにしないっていう、
反抗心があることなのかな。

とりあえずは



ゆっくり、ゆっくり、かなぁ……。










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