第7章 寄り添う静かな優しさは
孤爪
そっと戸を閉じる音がする。
孤爪(もう、戻るんだ… )
ほんの少し名残惜しさのようなものを感じながら
顔を上げた。
黒板には
ジャージ、ありがとうございました。
洗ってお返しします。
と、丁寧な字で書かれていた。
その時を見ながら、
口元に笑みが浮かべられていた。
孤(今日のは…クロにもないしょ)
自分でも、らしくないなと思いながら思う。
孤(俺と…あの子だけ。)
少しだけ赤く染まった頬を朝の冷たさのせいにして
唇に指で触れる。
孤(これは……俺だけ。)
彼女が起きる前にした事を思い出す。
孤(白雪…姫だっけ…?)
いつか見た童話を思い出す。
名も知らない彼女を連れて。