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300Kmと0㎝

第7章 寄り添う静かな優しさは


孤爪

長い階段を登りきると、
沢山の教室がある。

教室には、椅子もあるし机もある。
何処かの教室に入ろうと思った。

廊下から、教室の方を見ると
一つだけ戸が開いていた。

その教室に入ると

孤「誰かいるの?」

声に気づいてこちらを向いたのは、女の人…?
暗くてよく見えないけど、身長や体格を見ても多分そうだろう。

「孤爪…研磨さん?」

向こうは見えてるようだが、こちらからは見えない。
しかし、声音が少し震えていた。

孤「泣いてるの?」

彼女は無言だった。
この無言を肯定と捉えた。

このまま放っておくのも、なんだかいい心持ちではないから、
とりあえず、窓に向かって歩く。

彼女は黙っていたままだった。

隣にまで来たが、俺も、彼女もお互いの顔を見なかった。

黙って隣にいるだけだったが、
泣いているであろう彼女をこちらに向かせた。

顔を上げさせた形になって、背の低い彼女は少し俺を見上げた。

孤「…キレイ……。」

素直な感想だった。
涙が、外の光に反射していて、
白い肌は、透き通りそうだった。

偶然触れた肌が冷たくて、驚いた。

孤「どれくらい、いたの?」

また彼女は黙ったままだ。

きっと、長い時間いたんだろうと推測し、
上着をかける。

と言っても、ジャージだからそこまで暖かいわけじゃないだろうけど。

「孤爪、さん…」

ジャージを掴み、返そうとする手を止めた。

孤「クロが、悲しむから。」

それが後付けだったのかすらわからない。
それでも、彼女の手を止めていた。

彼女の手がジャージから離されてから、
俺は近くの席に座った。

目を開けたら、いつの間にか寝ていて、
窓辺には彼女はいなかった。
しかし、自分の前の席の隣の席から、
自分のいる席の隣へ、頭を伏せていた。

俺が起きた事に気付いたのか、
ただ呟いたものか、わからないけど

「孤爪さん、あったかいですね。」

触れているわけではないが
自分に向けての事だとわかっている。
何か、返事をしたほうがいいかと思い、

孤「研磨でいい。そういうの、嫌いだから。」

とだけ、返すと、

「ありがとう、…研磨」

と言われた。

部屋に戻る気にもなれなかったから、
机にまた伏せて、目を閉じた。



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