第5章 行く手を阻まれ揺れる想いは
藍蘭
私はあの後彼と別れて、女子部屋に向かった。
それまでがすごく長かった気もしたけれど。
月島「おやすみなさい。」
抱きしめたまま彼は言った。
藍蘭「おやすみ。って言いたいけど、このままじゃ帰れない。」
月島「先輩、明日俺が頑張れるように、キス、して下さい。」
私は息を飲んだ。
月島「ただのおまじないですよ。」
月島くん、そういう事言うんだ…
じゃなくて、キス?
藍蘭「私なんかがやっても、効力ないよ?」
月島「じゃ、俺が。」
頬に手を添えられて、少し目線が斜め上を向く。
藍蘭「月島くん…?」
よくわからなくなっちゃって
少しふわふわした気持ちになって。
触れた唇だけが温かくて、
これが現実だと理解させられる。
月島「先輩がよく眠れるおまじない。おやすみなさい。」
そういって、私から離れた。
優しい香りが香った。
少し赤くなった頬に気づかないまま女子部屋へ。
谷地「おかえりなさい!どちらに行ってたんですか?」
清水「少し遅かったから、心配した。」
他のマネジャーの方もおかえり〜と迎えてくれて。
心配してくれる仲間もいた。
それにひどく安心して笑みがこぼれた。
藍蘭「せっかくだから、少し校舎を回りたくて。」
「そうだよね。明後日で、もう終わっちゃうもんね。」
梟谷の、マネジャーさんが寂しそうに言う。
「烏野組は、会いにくくなっちゃうもんね。」
私も悲しくなってきた。
谷地「大丈夫です!自転車でも、走ってでも遊びにきます!」
藍蘭「やっちゃん、それは無理があるよ。」
やっちゃんのおかげで、雰囲気が明るくなった。
「ところでさ、さっき誰かに合わなかった?」
その質問は私に対してだ。
いろんなことがあったけど、全部言うには言えない。
藍蘭「うん。いろんな人に。」
「あの、おっきいミドルとうちの木兎、合わなかった?」
一瞬、言葉が詰まった。