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300Kmと0㎝

第5章 行く手を阻まれ揺れる想いは



赤葦

じゃんけんで決めれば

なんてこと言わなければ良かった。
そんなこと、言わなければ
こんな思いはしなくてよかった。

「ごめん。藍蘭」

木兎さん?
読んでる名前は藍蘭さん。

少しだけ、様子を伺うため見てみると抱きつかれていた。
しかし、様子が変だ。
2人とも泣いている。
何故泣いているのか、という疑問とともに
苦しさが込み上げて来る。

あそこにいるのが何故俺じゃないのだろう。
彼女が抱きしめられているのに、
何故なにもしないのだろう。

今彼処へ行くことができるなら…

「赤葦さん。」

不意に声をかけられる。
振り返ると月島がいた。

月島「黒尾さんが遅いから様子見て来いって…。」

俺が今まで見ていたものに目を向けて息を呑む。

月島「あれ、藍蘭さんですよね?」

小さく頷いた。
そちらに行こうとした彼を止める。

月島「なにするんですか。僕、このまま見なかった事になんてできませんよ。」

彼が言ってくれれば…。
そんな考えもよぎった。

月島「赤葦さんも、そうなんじゃないですか。」

疑問形ではあるが、確信のある言い方。
きっと、彼もまた…

赤葦「俺は…。」

少しだけ焦りをはらませた表情を見送る事しか出来なかった。

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