第18章 逢瀬
藍蘭
しかし今日のは違かった。
噛み付くように深く深く
普段優しくて、思慮深い彼がそんなことする訳ない、
なんでどこかで確信に近い形であったんだけれど
そんなの唯の願いであって、希望であった。
後に手を回されて、逃げるに逃げられない。
空気が薄くなって力が入らない手で身体を押すと
一瞬だけ唇が離れる。
また深く深く、堕とす
時々漏れる吐息と水音。
口内を犯すように、舌を絡めとる。
やっぱり力が入らなくて、ヘタリとその場に崩れ落ちた。
藍蘭「急に、どうしたの…?京治…」
肩で息をしながら彼に問う。
彼は軽く口角を上げて、
赤「藍蘭の事、離したくないなって…」
トントン、と彼はおいでと催促する。
私の身体をスッポリと覆い隠すように
後ろからぎゅっと抱きしめる。
赤「俺はね、本当はずっとこっちにいて欲しいって思ってるし
もっと俺の近くにいてほしい。
もっと我儘を言えば、梟谷に来て欲しい。
毎日あって、こうして話をして、別れ際にはキスをする」
熱いのはお風呂上がりのせいなのか。
彼の心音に耳を傾けると、私の鼓動とシンクロする。
赤「ほら、ダメ。俺結構恥ずかしがってるんだから」
無理矢理にでも、彼の顔を見れるなら嫌な気分にはならない。
藍蘭「ねぇ、京治。東京の星は随分と少ないのね」
一瞬ピクッと身体が反応した。
赤「そう、だね。宮城は星は沢山見れるの?」
藍蘭「えぇ、まぁそれなりに。
山の方はとても綺麗よ」
いつか、行ってみたいな、そう呟いた気がして、
こくりと頷いた。
藍蘭「あのね、星は見えなくても、
そこにあるのよ。
消えかけだって北斗七星だし、見えなくても、冥王星はあるでしょう?
当たり前なんだけどね」
ちらりと彼の顔を盗み見て、
藍蘭「星と同じよ、私たちも。
見えなくても、どんなに遠くでも、私はいるし
京治もそばに居る。
だから、大丈夫」
赤「余裕だね。俺ばっかり焦って馬鹿みたいでしょ?」
藍蘭「少なくとも、喋ってる事の
何十倍も寂しいわ」