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300Kmと0㎝

第14章 熱


Noside

午後11時ごろ、浮き足立つ生徒が、
布団に入りながらコソコソと会話をする中で、
スクッとこっそり立ち上がる影があった。

福「……」

その影が動くのをじっと見つめるだけで、
誰かに言うつもりはないらしい。

それに気づいた影は、一瞬だけ困った顔をして、
動作を止めた。

福永は何事も無かったように目を閉じた。

少しだけ安心した影は、携帯の薄暗い光で
時刻を確認して、また動き出した。

「おい、研磨どこ行く。」

暗闇から聞こえたその声は確かにあの主将のもので。

孤「散歩。」

「俺もついていきたいです!」

「ダメだろ、外出自体。」

暗闇でも、特徴のある声は判別が付きそうだ。

「就寝時間過ぎてんだ。まず布団戻れ。」

誰がどの位置にいるか分からない状態で、
いるかもわからない暗闇に言葉を投げる。

「おい研磨?」

返事はない。

布団から立ち上がる影は、壁を伝って
電気のスイッチを探す。

パチッと音が聞こえて眩しい光が目を刺す。

暗闇に慣れた目は、一瞬強烈な白を映す。

何度か目を瞬かせると、特徴的な頭を探す。

しかし彼の姿はなく、丁寧に閉められた扉を見て、

黒「おいっ!研磨がいねぇ!
探しに行くぞ!」

海「見つからないと怒られるのは俺らだもんなぁ」

黒「飲み会から帰ってくる前にみつけっぞ!」

ドタバタと部屋を出て行くとモゾモゾと
布団から福永が顔を出す。

すると布団を上げて、コクリと頷く。

孤「あ、ありがとう」

またコクリと頷く

孤爪が出て行くのを見送ると、
福永も布団に戻る。


「大丈夫、だよね。」


心配に思いながらも、歩みを止めることは無かった。
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