第14章 熱
月島
いつもより肩に力が入るのは何故だろう。
変に力が入って上手く決まらない。
空回りしてるような変な感じ。
手のひらを何度か開いたり閉じたりして
違和感をなんとなく感じる。
東「なんか藍蘭は生き生きしてるなぁ」
澤「そうだな、なんかいいことでもあったんだろ?」
前で談笑する先輩の声がやけにしっかり聞こえた。
月(いいこと、ね。)
昨日の光景を思い出すと、眉間にしわがよる。
日「なに怖い顔してんだよ、影山より酷いぞ。」
後ろから声が聞こえた。
あぁ嫌だ。
朝から煩いのも、王様と比べられるのも、
全部嫌だ。
月「ほっといて、カンケーないから。」
たった1つの出来事でこんなに心を掻き乱されるのも
気にくわない。
それにバスで、大地さんと…
舌打ちを1つして、何気なく視線を飛ばす。
すると意識せずに視界に入るのが彼女
感じていた苛立ちが消えた。
時間が止まったようだった。
交わった視線は外されることも、外すことも叶わずに、
そのままだった。
菅「月島ー?」
声をかけられて驚いたように振り返ると、
スパイクの順番が来ていた。
すいません、と言ってボールを投げる。
無意識のうちにボールはストレートへ、
体だけがクロスを向いて。
打ちづらそうに放たれたボールは彼女の元へ。
ボールを渡しに僕の方へ近づいてくる。
やめて、どんな顔をしてるかわからないから。
嫉妬で歪んだ想いなんて、伝える気はないから。
藍蘭「蛍、調子悪いの?大丈夫?」
あんたのせいで狂わされてるんだよ。
月「なんでもないです。」
踵を返した僕の手を掴んだ。
藍蘭「大丈夫な顔してないよ。無理しちゃダメだよ」
月「藍蘭さんが付きっきりで看病してくれるなら、
無理しませんよ」
藍蘭「う、え!?あっうん。」
月「…冗談です。心配しないでください。」
ボールを受け取ると、少しだけ早足で戻る。
藍蘭「っ……」
振り返ることはできなくて。