第1章 俺のお姫様
「銀ちゃんアル」
「……旦那?」
沖田は眉を寄せた。
「そうアル。銀ちゃんは優しいから、絶対に可愛いって言ってくれるネ! だから、お前なんかに構っている暇は私にはないアル! それじゃあナ!」
また先程まで歌っていた歌を歌い出して、神楽は自分の家である万事屋に向かった。しかし……。
「おい、待ちやがれ」
神楽は着物の襟をガシッと掴まれて、引き摺られるようにして沖田に連行された。
「ナ!? 何するアルカ! さっさと離すネ!」
「うるせェ」
沖田は神楽を掴みながら、ズンズン進んで裏道に入った。
ある程度のところまで来てから、沖田は神楽を壁に押し付けて覆い被さるような体勢をとった。
「は、離せヨ。私は万事屋に帰りたいネ」
神楽は必死で抵抗するが、今のこの状況で沖田を吹き飛ばすことは無理だった。
自分の体と相手の体の間が取れず、勢いをつけて沖田に攻撃することができなかったからだ。
「だ、だいたい……お前が最初に喧嘩ふっかけて来たんダロ? 何でこんな……」
「何でこんなことするかって? そんなのわかりきってらァ」
彼は急に神楽の耳元に顔を近付けて、囁くように言った。