第5章 手に入れたいもの
「ヘッ、こんな拳で俺を殴れると思ってんでィ?」
神楽の拳は軽々と沖田に受け止められてしまった。
「……」
神楽は沖田を睨むと、拳を離した。
「……とにかく! 私は早く帰りたいアル!」
そう言って、神楽は昇降口に向かおうとした。が……。
「あ!」
神楽はくるりと向きを変えた。
「私、銀ちゃんのところに用があったネ!」
神楽は沖田のところまで来ると、ニカッと笑った。
「じゃあナ!」
そう言って、神楽はスキップをしながら職員室に向かった。
「……」
沖田は自分の前を通った神楽の手を掴んだ。
「!? な……」
何するアル……と言おうとした神楽の唇を沖田の唇が塞いだ。
「!?」
ゆっくりと唇を離して、沖田はニヤリと笑った。
「今日はこのくらいで勘弁してやらァ」
沖田はそう言うと、昇降口に向かった。
「な、な!?」
神楽は驚きのあまりに、言葉にすることができなかった。そして、しばらくの間、その場に立ち尽くしていた。
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