第3章 君の傘になる
「……そうアル……」
沖田はプッと吹き出した。
「お前、今日の天気予報、最後まで見てたかィ?」
「……見てないアル」
神楽は久しぶりに傘を持たないで外出できることが嬉し過ぎて、天気予報を最後まで見ないで飛び出して来たのだ。
「『だけど、途中の数時間だけ晴れる時があるので、洗濯物を干すのはその時間帯がいいでしょう』とも言ってたはずでさァ」
「そ、そうだったアルカ!?」
神楽は落ち込んだ。最後までちゃんと天気予報を見ていたら、こんなヘマをしなかったのに……。
神楽はハァと盛大にため息をついた。
「でも、あともう少ししたら、曇りに戻るはずでさァ。だけど……」
沖田は意地の悪い笑みを浮かべて、神楽に聞いた。
「少しでも早く万事屋に帰りてェんなら……送ってくぜ?」
「……どうやって送って行く気アルカ? お前、傘持ってねェダロ」
「そんなもん、決まってらァ」
沖田は上着の右側を持ち上げた。
「こん中に入るんでさァ」
「こん中って……」
それは沖田のすぐ隣で、しかも沖田の隊服の上着を持ち上げて一緒に歩くということだ。つまり、沖田と密着をしなければいけないだけでなく、沖田の隊服の中に入らなければいけないのだ。
「い、嫌アル!」
神楽のその言葉を聞くと、沖田は少しの間考えてから神楽に後ろを向けた。
「そうですかィ。いや〜、残念だな〜。せっかく、駄菓子屋で酢昆布でも買ってやろうと思ってやしたのに」