第2章 ご機嫌取り
「……へ?」
神楽はその言葉を聞いて、泣くのをやめた。
総悟はバツが悪そうに頭を掻いた。
「地方から江戸に来た人だったんだが……知り合いの家がわからないからって駐屯所に来たんでィ。それで……」
「暇人だったお前が駆り出されたアルカ?」
総悟はちょっとムッとしたが、コクンと頷いた。
「……そうだったアルカ」
神楽は涙で濡れた顔でニコリと笑った。
「よかったアル! 総悟が浮気してなくて!」
それを聞いて少し驚いた総悟だったが、ニヤリと笑って神楽の目の前に来た。
「……お前……そんなに俺のことが好きなんでィ?」
「!?」
総悟に聞かれて、動揺した神楽が答えれずにいると、総悟はさらに笑みを濃くして聞いた。
「浮気されて泣くほど、俺のことが大好きなんですかィ?」
「べ、べべ別に! そういうわけじゃ……」
「じゃァ……」
総悟は赤くなった神楽の頬を優しく触った。
「何でそんなに泣いたんでィ?」
「うっ……それは……」
神楽はさらに顔を真っ赤にして俯いてしまった。
総悟はいつまで経っても答えない神楽にチッと舌打ちをした。
「……可愛くねェ奴。でも……」