第2章 ご機嫌取り
そんなことがあったからか、神楽は怒っていながらも酷く落ち込んでいた。
(何アルカ……あんな可愛い女の人がいるなら、私なんかと付き合わなきゃよかったのに……)
酢昆布を食べながら、泣きそうになるのを必死で抑えた。
「総悟なんか嫌いアル……」
「誰のことが嫌いなんでさァ?」
後ろから声をかけられた。ビックリして振り返ると、そこにはさっき振り切ったはずの総悟が立っていた。
「……総悟……」
名前を呼んでからハッとして、神楽はプイッと横を向いた。
「な、何の用アルカ? さっきの女の人はいいアルカ?」
「何言ってんでィ」
総悟はそのまま、神楽に近付いた。
「寄るナ!」
神楽は総悟に向かって、さしていた傘を向けた。
「この浮気者! もう許さないネ! 私に寄るナ!」
「はァ? 何言ってんでさァ?」
「トボけるなヨ! さっき見たんだゾ!」
神楽は目に涙を溜めて言った。
「お前が可愛い女の子と一緒に歩いているの……見たんだヨ!」
神楽は我慢できずに泣き出した。
「し、信じてたのに……何で裏切ったアルカ!」
「ちょ、おま、何で泣いてるんでィ!? あの人はただ、道に迷っていた人でさァ」