【3Z】犬のように愛し猫のように可愛がる【R18/BL】
第13章 思わぬ落とし穴
言えてないし…。
自分の情けなさに溜息が出る。
教師らしくガツンと言うつもりだったのに…もう諦めてるのか?
いや…
「怖い…」
怖い?何が?高杉がか?
いや、違う。もっと違う事を恐れている。
もしもこれ以上踏み込んでしまったら、きっと高杉は…
「白水先生、おはようございます」
声が聞こえ顔を上げる。
気付くと志村妙がそこに立っていた。
「…あ、あぁ。おはよう」
「どうしたんですか?朝から暗い顔して」
「え、そう?いや、何でもないよ。ちょっと寝不足なだけだから」
心配をかけるわけにはいかない。そう思い慌てて笑みを作り答えた。
「ふふっ、先生も昨日は楽しまれてたんですね」
「え!?」
その言葉にドキリとしてしまう。
「文化祭ですよ。大盛り上がりでしたからね」
「あ、あぁ…そうだよな。うん、楽しかったよ」
そうだよな、普通そういう意味で聞くよな。
変に焦ってしまい一人恥ずかしくなる。
「志村も楽しんでたみたいだな。…その、クラブ活動」
一応そう言っておく。キャバクラとは言えない。
「ええ、おかげさまで大繁盛でしたよ。ただ…」
お妙が少し表情を曇らせる。
「お酒が一本無くなっちゃたんですよ。どうも盗まれたみたいで」
「すいませんでした」
「なんで先生が謝るんですか?」
「あ、いや気にしないで。…それはヒドイ話だな」
「まぁ、盗まれたのはそれ一本だけだったんで良かったんですけど。もし犯人見つかったらすぐにでも首の骨折って晒し上げにしたいわ」
ふふっ、と笑いながら柔らかい口調で言うが、お妙の目は本気だ。
一緒に笑うが背中は汗でびっしょりだ。
死ぬまで胸の中に封印しておこう。
八雲は心の中で誓った。
「じゃあ先生、また教室で」
「あぁ、また」
小さく会釈をし、お妙は去って行った。
さて、俺もそろそろ職員室行かないとな。
先ほどまでのモヤモヤを頭から振り落とし八雲は仕事モードに入った。