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君がいた夏

第2章  爪痕【赤司征十郎】*裏あり


「…わかりました。では旦那様が戻られるまでにはここに帰ってきて下さいね」

「ああ!ありがとう、爺や。それでは街を探索してくよ」

俺はすぐに支度をして玄関を出ると爺やが当然の如く見送りに来る。

「では、気を付けて行ってらっしゃいませ。くれぐれも危ない場所は行かないように!」

「ふふ、わかってるさ。ではまたな」

微笑みながら俺はドアを閉め、夕暮れ時のショッピング街を目指す。



だけど俺の目的はそこらへんをただぶらぶらするだけではない。以前から行ってみたかった場所があり、俺はそこを目指す。

それは高級BARだ。
そのBARがあるホテルの最上階までエレベーターで登り、俺は何時ものように毅然とした立ち振る舞いで店に入る。
流石に年齢を確認されるかと思ったが、ボーイ達は何の疑問も持つことなく笑顔で迎え入れる。


呆れるくらい自分が年相応でない事がよくわかるな…。

とは思ったもののおかげで追い出されずに済みそうなのでここは良しとしておく。


もうすぐ日没になるためかテーブル席はいっぱいで、俺はボーイにカウンター席を案内された。


席に着いてバーテンダーにお勧めのカクテルを注文し、出来上がって人生で初めてのアルコールを口に運ぼうとしたところで、俺の隣に一人の女が腰をかけた。

微かにホワイトムスクの香りが漂い、嗅覚を刺激され俺は無意識に女を見る。

胸の辺りまである丁寧に巻かれた黒髪、白い肌でどうやら日本人だ。

白地に青を基調とした大きな花柄のタイトなオフショルダーのワンピースを着ており、浮き彫りになる体のラインと細い腕、長くて綺麗な脚に思わず見入ってしまった。

「Ma'am,would you like something to drink?(飲み物はいかがなさいますか?)」

「Vodka orange,please.(ウォッカオレンジをお願い)」

女の流暢な発音に驚いていると、ウォッカオレンジを貰ってから女が俺の視線に気付いてこちらを振り向く。
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