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君がいた夏

第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】


なんか彼氏彼女同士ってもっとこう、笑い合ったり、付き合う前よりもお喋りして、キスしてラブラブになるんじゃないのかな……?


私達、付き合う前よりお喋りさえ出来てない気がする。
また心臓の音が五月蠅すぎて紫原君に聞こえそうで恥ずかしくて堪らない。


私は少女漫画で見たラブシーンと今の自分達を比較して、イメージと違う事に不安になっていると紫原君がタイミングよく静寂を破ってくれた。


「……ナナちん、家まで送るから道教えて」

紫原君が恥ずかしそうにそっぽを向き小さい声で私に言うと、私は思わず彼の帰りが遅くなってしまわないか心配になり彼の顔を覗き込む。

「え?いいの?」

「……んなの、いいに決まってんじゃん」

相変わらず彼はそっぽを向いたままだ。
まるで小学生男子が初恋の子のお願いを聞いてあげるみたいに。

高校生で2メートルある彼がまた更に愛しく思え、思わず私はまた顔が綻び、お言葉に甘えて送ってもらう事にした。

「…じゃあお願いね」

そうして私は紫原君と手を繋ぎ、私の家までの道を教えながら静かに歩き続ける。

もうすぐ私の家に着きそうな所まで辿り着き、それを彼に伝えるもまた私達は黙ってしまう。


なんか、もっと喋りたいな。けど何話そうかな……。


元々沈黙に耐えるのが苦手な私はつい恋愛指南書でよく言われるウザい質問をしてしまう。
あと本当に彼が私を好きなのかどうかも不安だったから……。

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