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君がいた夏

第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】



「…!ひゃ!先輩!?」

なんと、彼は目を閉じ私の左頬に伝う涙を舌で舐めて拭ったのだ。
そして角度を変えて右頬の涙も同じように絡め取る。


「…ふふ、顔、熱くなってるよ?」

氷室先輩は舌をしまい妖しく微笑んだ。
そりゃそうだ。こんなイケメンに舐められたら、顔が赤くなるだけじゃない。

「…だ、だって!氷室先輩にそんな事されたら…」

「されたら?」

意地悪に口角を上げる先輩。
この人には敵うはずがない。癖で意地を張る私でもここは素直にならざるを得なかった。


「…さ、さらに好きになっちゃうじゃないですか…!ズルイですよ……」


緊張で口がわなわなとしている私を見て、氷室先輩は更に強く私を抱き締めた。


「やっと、言ってくれたね。好きって。ナナちゃん、本当は敦の方が好きなんじゃないかって不安だったんだよ」


先輩でも不安になることがあるのかと内心驚いてしまう。けどさっきは紫原君の事が気になってたから無理もないよね。
だから私は先輩に有りっ丈の気持ちを伝えた。


「ごめんなさい!私氷室先輩に初めてお会いしてからずっとずっと憧れてたんですよ…!それに、先輩と付き合えるなんて今でも夢みたいで信じられないです…」


言い切った私は先輩の顔を見上げる。すると彼は今まで見たことないくらいの優しい目と微笑みを私だけに向けてくれた。

「本当?嬉しいな。この前話しかけた時は逃げられちゃったからてっきり俺の事嫌いなんじゃないかと思ってたんだよ」

「そんなわけないじゃないですか!あれは、その、先輩が声をかけられてびっくりしちゃって…んっ!!」

私が言いかけた瞬間、彼はいきなり目を閉じて私の唇を塞いできた。
びっくりはしたけど、私も彼を真似て目を閉じ彼の唇を受け入れる。


そして唇同士が長く触れただけで先輩はそれ以上何もしなかったけど、彼は人差し指を立て私の唇に触れる。


「…そうだったんだねナナちゃん。すごく可愛くて堪らないよ」

キザに微笑む先輩に私は魅入ってしまい言葉が出てこない。そして耳元で甘く囁いてきた。

「…続きはまた今度にしような、ナナ」


それから私はその優しさの裏にある先輩のコンプレックスを知り更に愛しく思う。
そして甘く蕩けるように私を愛してくれる彼から益々離れなくなっていった。


氷室END fin.

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