第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
「ナナちん、さっきはごめん。泣かしちゃって……。」
目を俯く紫原君。
それに普段マイペースな彼がこんなに気持ちを込めて謝るのは初めてだ。
正直驚いてるけど、私は彼を安心させるように優しく言い聞かせる。
「いいよ、もう気にしてないから。それに紫原君がちょっと言葉キツイの知ってるから」
「…ナナちん、本当にお菓子みたいに甘いんだから」
呆れ気味に笑ったと思ったら、そっぽを向いて恥ずかしそうにする紫原君。
「け、けど、そんなとこ、好き…だし……」
「うそ?本当?」
「…2度は言わねーし!!」
夢じゃないのか、また疑いたくなってしまう。
けど、さっきほっぺを抓って痛かったし、紫原君の反応はリアルだし、やっぱりここは現実でいいんだよな。
「おいおい、敦。それじゃ聞こえないだろ?」
「…む、室ちんは黙っててよ!!」
耳を傾ける氷室先輩にからかわれていじける紫原君。
けど、私には聞こえていたよ。
そんな素直じゃない彼に私はフォローを入れる。
「先輩、あまり紫原君の事、からかっちゃダメですよ。紫原君、私には聞こえたよ。ありがとうね。私、男の子に告白されたの初めてだからつい耳疑っちゃったの」
「はは、言われちゃったな」
「…ナナちん」
私は微笑みながら彼を見つめると彼は驚くように目を見開いていた。暫く2人で見つめ合っていると、氷室先輩が不敵な微笑みを浮かべて私達の間に入る。
「じゃあ、ナナちゃん。君は俺と敦、どっちを選ぶんだい?勿論俺だよね?」
「え!?」
「ちょっと〜、しっかりしてよ。ナナちん!勿論、俺に決まってるでしょ?」
2人は私の目の前に手を差し出し、戸惑う私を催促する。
ずっと憧れていた先輩とずっと友達と思ってた大きいけど子供みたいな彼。
一体、どっちが私は好きなんだろうか?
憧れのかっこよくて麗しい氷室先輩の手を取った→52pへ
子供みたいだけどなにかと一緒にいて落ち着く紫原君の手を取った→55pへ