第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
「ナナちゃん、君の事がずっと気になってたんだ」
「……え!嘘、先輩が私の事を!?」
慌てる私に優しく微笑む氷室先輩。
上品で色気のあるその表情と声に見惚れ赤面し、私の耳が破裂しそうになる。
「けど、今日君と一緒に遊んで、話してみて気持ちは固まったよ……」
ここで先輩は一呼吸置いて、黙って私を見つめる。
まるで焦らされてるみたいだ……。
これも帰国子女のテクニックなの?
「ナナちゃん、君の事が好きになってしまったみたいだ。…君の事をもっともっと知りたい。だから俺と付き合って……」
う、うそ!?
夢じゃないよね!?今ここはリアルですよね!?
あ、あの憧れの氷室先輩が何も取り柄のない私に……告白してる!?
「…あ、あの先輩!?本当、に?言ってるんですか?」
「ふふ、嘘つくわけないだろ……」
そして氷室先輩は私の手の甲に自分の唇を寄せて、チュっと音を立てる。
その仕草がまるで王子様みたいでつい見惚れちゃう……。
「〜!」
けど、それどころじゃない私は声にならない叫びを上げて後ろに倒れそうになった。
「ナナちゃん!?」
「おっと!ナナちん、大丈夫〜?」
「む、紫原君……?」
紫原君は重い私を片手で難なく支えて、いつもののんびりな口調で問いかける。
「全く、室ちんも何やってんのさ。またナナちん、困らせて」
「ナナちゃんの反応が面白くて可愛いから、ついな」
もう氷室先輩の口説き文句を聞ける余裕がない私。
紫原君はそんな私を立たせて、両肩を掴み私の顔を覗き込む。