第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
やっと落ち着いた2人だけど今度は私を食い入るように見つめている。
勿論いい男2人に見られて女冥利に尽きるんだけど、羞恥心の方が完璧上まっているから両手で自分の体を覆い隠す。
「あの、そんなに見ないでくださいよ…!恥ずかしい……」
「あ、ごめんな。ついね。敦。俺達は後ろを向くか」
「へ、何で〜?」
紫原君が無邪気に尋ねると氷室先輩は自分の唇に指を当てて、艶っぽく答える。
「紳士はレディのペースに合わせるんだよ」
「「さっすが、室ちん(氷室先輩)!」」
やっぱり帰国子女は違うなと感心する。
紫原君と声が揃うとお互いに顔を見合わせて、私は恥ずかしくて目を俯いた。
「おいおい、仲がいいな。2人とも。妬けちゃうじゃないか」
「だってよ、ナナちん?」
「…知らないよ!」
紫原君はどうやら恥ずかしくもなんともないみたい。
そんな余裕な彼を悔しく思い、私はそっぽを向いてパーカーを脱ぐ。
そして、初めて露わになる私の特にお腹周りがプニプニな水着姿。
私は決心がついたところで後ろを向いてくれた2人に声を掛ける。
「…あの、脱ぎました」
そして2人が私の姿を見ると、目と口が開きっぱなしだった。
やっぱり、こいつ超デブじゃん!とか思ってるのかな。
と不安に思っていると2人は変に気を使わずに純粋に褒めてくれた。
「…ナナちん、言うほど酷くねーじゃん。寧ろ、思った以上にすげーし」
「思った通り、glamorousでsexyだよ。ナナちゃん……」
紫原君は顔を赤らめて唇を尖らせながら言い、氷室先輩は微笑みを浮かべ囁いてきた。そんな優しい彼らに私は思わず赤面し、下を向きながらお礼を言う。
「…本当?あ、ありがとうございます!!」
「ふふ、どういたしまして。さ、行こうか!」
「きゃっ!先輩!?」
「ちょっと、室ちん!また抜け駆けして!」
氷室先輩が私の手を引っ張り、バスケ部皆のいる砂浜に走って向かう。
まるで少女漫画のシーンみたいで、その瞬間はとても甘酸っぱくて、でも幸せでいつの間にか顔が綻んでいた。