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君がいた夏

第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】



「ナナちん、大丈夫〜?」

紫原君の顔が私の頭から離れて、彼は今度私を上から覗く。

「む、紫原君?」

さっきもそうだけど、今の行動も意外すぎて顔の締まりがなくなってしまう。

「…敦、お前にしては積極的じゃないか」

「室ちんさぁ、今のは完璧セクハラでしょ?ナナちん、困っちゃったじゃん」



紫原君に問い詰められるも氷室先輩はその涼しげな顔を崩さない。それに、その表情がとても妖しくてそれだけでもノックアウトしそう。


「敦こそ何を考えてるんだい?海に入るにはパーカーなんて邪魔だろ?それより敦、いい加減どいた方がいいんじゃない?」

「やだし〜」

2人がピリピリと火花を散らしてる中、私は呑気にも氷室先輩がパーカーを脱ごうと言ってきたのかようやく理解した。


そしてあんなピンクな妄想した自分を余計に恥ずかしく思った。


ー暫く2人の言い争いが続いているともう日が暮れるかもしれないと思った私は痺れを切らし、いつもより声を張る。


「もう、2人とも!!こんな調子じゃ日が暮れますよ!いい加減にして下さい!」


私が言い切ると2人は渋々言い争いをやめてくれ、氷室先輩が私の顔を覗き込んで申し訳なさそうに謝ってくれた。

「…ごめんな、ナナちゃん。君をそっちのけにして」

あまりの色っぽさに私はつい許してしまった。

「…!いやいいんですよ」

「てか、室ちんが引き下がらないからでしょー?」

まだ喧嘩腰の紫原君。
このままではまた喧嘩が始まると思った私は紫原君を諭すことにした。


「もう、紫原君!このままじゃ本当に日が暮れちゃうじゃない。それに皆で遊んだ方が楽しいでしょ?」


「…ちぇ。わかったよ。ナナちんがそういうなら」

罰が悪そうにする彼。でもちょっと捻くれてる彼が素直になるのは微笑ましいかも。
私は思わず顔が緩んでしまう。

「…ありがとう、紫原君。わかってくれて。それにパーカー脱ぎたいからさ、悪いんだけど離してくれる?」


そして、紫原君は絡めた腕を解き私はパーカーのチャックを下げ始める。



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