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君がいた夏

第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】


私はどう返していいのか、どっちの手を取っていいのかわからないまま戸惑っていると、2人は同時に座り込んでいた私の手を握って立ち上がらせる。


「さぁ、ナナちゃん。折角海に来たんだ。今から俺と一緒に思う存分に遊ぼうか」

「氷室先輩…」

氷室先輩が必殺スマイルで私を誘う。
思わずその麗しい笑顔に私は顔が沸騰するんじゃないかってくらい赤面すると、紫原君が後ろから私にもたれかかり、私の頭に顎を乗せてきた。


「えっ!?ちょっと、紫原君!?」

紫原君の手、大きいな…。じゃなくて、さりげなく何やってんのー!?


紫原君の大きくて逞しい身体と熱がパーカー越しでも伝わり、私の心臓の動きが更に活発になる。


「室ちん!ナナちんは俺と遊ぶんだかんねー!」

紫原君が子供みたいな口調で氷室先輩を挑発すると、氷室先輩は紫原君に鋭い目線を送る。

「…おい、敦。ナナちゃんから離れろよ。馴れ馴れしいぞ。な、ナナちゃん?」


2人は火花を散らして一触即発の雰囲気を醸し出していて、戸惑う私は今迄の2人のやり取りを頭の中で分解し、意味を考える。

いくら恋愛に疎い私でも答えは一つしかない。


えっと、これは、その、私今モテ期なの!?
しかもこんなイイ男2人が私を取り合ってるなんて…!
夢みたいだけど、夢じゃないんだよね?


一旦自分の世界に篭った私は考えが纏まり、現実世界に戻るとまだあの2人は睨み合っており少々呆れてしまう。
私は2人の間に入り、見上げる。


「…あの、どうせなら皆で遊びませんか?」


すると2人はまるで鶴の一声を聞くように食い入るように耳を傾ける。
そして氷室先輩が私に顔を近づけ微笑みを向けてくれる。


「そうだな。じゃあ、そのパーカーを脱ごうか」


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