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君がいた夏

第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】


ーSide ナナー
私は今人生で1番アンビリバボーな光景を目にしてると思う。

だってデブで特に可愛いわけでなく取り柄もない私に、素敵なメンズ2人に囲まれ心配されているんだから。


これは夢じゃないんだよね?
いや、思い上がるな。きっとこれはいい夢を見てる最中なんだ!!


私は今の状況が信じられなくて自分の頬を抓る。

「…あれ?痛い」

抓った微かな痛みを確認していると、紫原君は呆れたように言い放ち、氷室先輩は私の目線に合わせて腰を落とし優しく微笑んでくれた。

「何してんの?痛いに決まってんじゃん。ナナちん、Mなの?」

「はは、何やってるんだい、ナナちゃん?」


ど、どうして?
氷室先輩も紫原君もなんで私に優しくするの?ドッキリじゃないよね?からかってないよね?

私は2人の優しさが信じられない。今迄のコンプレックスによって疑う気持ちの方が強く出てしまっているから。私はまた顔を埋めて2人に言った。


「2人こそ、何でここに来たんですか?私の事、放っておいてもいいから遊んできて下さい…」


いいえ、本当は違う。ここにいて私のそばにいてほしい。
けどなかなか素直に甘えられない私は啜り泣きながら、彼らを突き放そうとした。

「ナナちん、泣いてないでこっち見てよ」

「ナナちゃん?そんなに悲しい顔をしないでくれよ。折角のladyが台無しだろ」

「え、え!?あの…」

なんと2人は同時に私の目の前に手を差し出してきた。
そして2人らしい優しさの詰まった言葉が私の心を刺激する。

だって男子に優しくされた事なんて、1度もないから。


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