第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
そして、岩陰で1人肩を震わせ膝を抱え込んで泣いているナナちんがいた。俺達は気付かれないようにそっとナナちんの後ろに立つ。
「…こんな身体、晒せるわけないのに何で海きちゃったのかな?それに店員さんに乗せられてビキニ買っちゃったし…」
ふ〜ん、なるほどね。だからあそこに1人でいたのか。
てか、海入っちゃえばわかんないし、ナナちんが思ってるほど俺は気にしてないけどね〜。
てか、ナナちんのビキニかぁー。肌白いし、いい感じにムッチリしてるからきっとマシュマロみたいで美味しそうだろうな〜。
…超見たい。
隣にいる室ちんが俺に小声で話す。
「なぁ、敦。彼女はそんなに太ってないよな?」
どうやら室ちんも同じ事を思ってるみたいだ。
俺は腕を組んでいつもみたいに怠そうにして答えた。
「うーん。てか俺そんなん気にしたことねぇし。俺より背が低かったらそれでいいんだよね」
そんな俺に室ちんは愛想笑いをする。けど、俺はここで一気に締まった表情をして室ちんに宣言した。
「…だけど、俺。ずっとナナちんって抱き心地良さそうだな〜って思ってたよ。それに喋ってて落ち着くし楽しいし。俺の事怖がんないし」
「敦、やっぱりお前…」
やっぱり室ちんは驚いて目を見開いた。
だけど俺がこれでも負けず嫌いなの、知ってるでしょ?
室ちんはそんな俺に対しキザに微笑んできた。
「だから、室ちんにもナナちんはあげないよ〜」
「…望むところだよ、敦。けど、俺の方が経験あるからね。負ける気はしないよ」
この時の不敵な笑みを浮かべる室ちんが心底ムカついて俺は声を荒げた。
「そんなの、関係ねぇし…って室ちん!?」
俺の言い分も聞かずにすかさず室ちんはナナちんの肩を叩く。
先を越されたわ〜。けどまだまだだからね、室ちん。
俺もさらにナナちんのそばに近寄った。
ナナちんは後ろを振り向き、俺達を見ると目を最大限に見開かせていた。
「氷室先輩!?それに紫原君まで!?」
*次ページから夢主サイドで物語が進みます。