第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
え、俺がナナちんを好き?
でも俺、今まで好きな子いたことないからわかんねー。
俺は自分の胸に手を当てて考えていると、劉ちんがイライラし始めて口調がちょっと荒くなる。
「…敦、お前は葛城といるとそのゆる顔がいつもより緩んでるし、自然と笑顔になってることが多い。それにお前が葛城以外の女子と話してるのを見た事がないアルよ」
「劉ちん…」
確かに劉ちんの言ってること、的を得てるかもしれない。俺は下を向いて今までナナちんと過ごした日々を思い出す。
いつかの部活帰りに駄菓子屋で出くわして、そっから毎日の様に会って少しずつ喋るようになって…。
まぁ大体お菓子の話題が多かったけど。
ナナちんが俺の好きなまいう棒沢山くれたり、チュッパチョップスを幸せそうに舐めたりしてて。
そん時に見せてくれたナナちんのはちきれんばかりの笑顔が、何だか膨らました風船ガムみたいで可愛いな、って思ったり…。
そしたらいつの間にか俺、ナナちんの隣にいるのが日課になってたんだ。
「…劉ちん、なんか珍しくいい事言ったじゃん。ちょっと行ってくるわ」
「おい!!珍しくとは余計アルよ!!」
劉ちんを後にして俺は海から上がる。
ナナちんが喜ぶかと思って先にイチゴ味のカキ氷を買ってから、うずくまる彼女の隣に座る。
「ナナちーん、一緒にカキ氷食べよーよ」
ナナちんの目の前にカキ氷を差し出すと、彼女は目を見開いて俺を不思議そうに見た。
「紫原君こそ、一体どうしたのよ?皆で遊んできなよ!」