第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
ーSide 紫原ー
ホントは寮で寝てたかったけど、室ちんに無理矢理誘われて仕方なく来たって感じー。
それにナナちんも行くって言ってたからね。
でもいざ海を目の前にすると、なんかちっちゃい頃思い出して興奮する。
で、女の子に囲まれた室ちん置いてきて、海に勢いよくダイブしちった。
「…べー。しょっぱ……」
久振りの海水を思いっきり口に含んでしまい、ぺっぺっと吐き出す。
あぁ、海水もジュースみたいに甘かったらいいのになー。
と思いながら、全て吐き出し、気が済むまで唾を飲み込んで口を直していると劉ちんが俺の元へやって来た。
「敦!もう氷室がモテ過ぎて悔しいアルよ!」
あー、また劉ちんの室ちん妬みが始まった。
話聞くのめんどくさいからそのまま流そうっと。
「それよりさー、劉ちん。俺、海水口ん中入っちゃってちょーしょっぱいんだけど」
「…あぁ、お前に愚痴ったのが間違いアル。カキ氷でも食べて口直ししてろアル!」
「おぉ、劉ちんあったまいい〜。じゃあ食べに行こ〜っと」
劉ちんは頭を抱えて嫌味を言ってっけど、別に特に気にも留めない。
俺は劉ちんに言われた通りに海から上がろうとすると、ある光景が目に留まる。
「あれ、ナナちん?何であそこに一人でいんのかな?」
そう、ナナちんがレジャーシートの上でただ1人うずくまって皆の荷物番をしていた。
劉も俺に続いてナナちんを心配そうに見た。
「本当アルな。折角の海なのに」
一体どうしたんだろ。ナナちん、こういうとこ好きそうなのに。
俺は1人悩んでボーッとしてると劉ちんが俺の背中を叩いてきた。
「…おい、敦。彼女の元へ行ってやれアル」
「ん?何で俺?」
「バカやろアルな。お前、バレバレアルよ」
「バレバレって?」
何を言いたいのかわからない俺は聞き返すと劉ちんは溜息を吐いてまた頭を抱える。
「…鈍すぎアルよ。お前、葛城の事好きアルやろ?」