第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
そして、岩陰で1人肩を震わせ膝を抱え込んで泣いているナナちゃんがいた。俺達は彼女に気付かれないようにそっと近寄り、彼女の後ろに立つ。
「…こんな身体、晒せるわけないのに何で海きちゃったのかな?それに店員さんに乗せられてビキニ買っちゃったし…」
だから、あそこで1人でいたのか。
けど、そんな太って見えないけどな。
てゆうか、俺がロスに居た時はもっとこう、トドみたいな人が惜しげも無く三角ビキニを着てたし。日本人は気にしすぎなんじゃないかと思う。
それにいい感じにグラマラスだから逆にビキニが似合うだろうな。
すごく見たいよ…。
俺は隣にいる敦と目が合い、小声で話す。
「なぁ、敦。彼女はそんなに太ってないよな?」
「うーん。てか俺そんなん気にしたことねぇし。俺より背が低かったらそれでいいんだよね」
こいつらしい答えに俺は愛想笑いをする。
「…だけど、俺。ずっとナナちんって抱き心地良さそうだな〜って思ってたよ。それに喋ってて落ち着くし楽しいし。俺の事怖がんないし」
面倒臭そうに答えたと思ったらいきなり真剣になる敦に俺は目を見開く。マイペースなのは相変わらずだな。
「敦、やっぱりお前…」
「だから、室ちんにもナナちんはあげないよ〜」
ゆったりとした口調でいいながらも、敦の目は本気だ。
俺もこいつも負けず嫌いなのはお互いに知っている。
俺はフッと口角を上げた。
「…望むところだよ、敦。けど、俺の方が経験あるからね。負ける気はしないよ」
「そんなの、関係ねぇし…って室ちん!?」
敦が言い終わる前に俺はすぐさま、ナナちゃんの肩をぽんぽんと叩く。
「こんな所でどうして1人で泣いてるんだい、ナナちゃん」
ナナちゃんは後ろを振り向き、俺の顔を見ると目を最大限に見開かせていた。
さぞ驚いたんだろう。
「氷室先輩!?それに紫原君まで!?」
38〜43p→紫原サイド
44p〜→夢主サイドで物語が進みます