第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
俺が敦の元へ向かうと、俺に気付いて先に敦から声をかけてきた。
「…室ちんじゃん。一体何の用?」
「あぁ、ナナちゃん見なかったか?それに敦、さっきまで海で泳いでただろ?」
俺がそう尋ねると敦は下を向き黙り始める。
少々様子がおかしい敦に俺はキョトンとする。
「…ナナちんが1人でいたから、俺海から上がってカキ氷あげたんだけどなんか泣いちゃって、あそこの岩陰に隠れちゃったんだよ」
カキ氷あげて泣いた?
俺は敦の言葉に疑問を持ち、彼を睨む。
「敦、お前泣かしたのか?」
「ち、ちげーし!」
「じゃあ、何でカキ氷あげただけで泣くんだよ?」
「……」
敦は口を尖らせて黙っている。多分何か言ったんだろうな。敦の言葉はダイレクトだから。
「言いたくないならいい。兎に角ナナちゃんのところへ俺は行くからな」
俺が下を向く敦を通りすぎると、敦は俺の左腕を掴んできた。
「…待ってよ、室ちん。俺も行く」
敦の思わぬ行動に俺は目を見開いた。
もしかして、ナナちゃんの事が好きなのか…?
そうだな、ナナちゃん以外の女子とはあんまり話してないもんな。だとしたら好きでも不思議じゃない。
でも例え敦がライバルでも俺は手加減しないけどね。
「じゃあ、彼女のとこへ早く行こうか」
俺は微笑んで敦と一緒にあの岩陰へ向かう。