第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
「俺の好きなタイプはね、包容力のある女性なんだ。悪いけど、君達みたいな自分の事しか考えていない子は苦手なんだよね」
俺は冷静にサラッと彼女達に言い放つと3年の女の子がキツく睨んできた。
「な、氷室君、もしかして葛城の事好きなの!?…超イケメンなのに趣味悪ー」
彼女に問い詰められて俺は口に手を添えて少し考える。
「うーん、そうだな。気にはなるかな。だってあの癖の強い敦と仲良くできるくらいだから」
その子は信じられないといった感じのわかりやすいリアクションをしていた。
どんだけ自分に自信あるんだよと俺は内心呆れる。
そう、実は前々からナナちゃんの事が気になっていた。
敦とよく話してるのもそうだが、何よりも自分の体型をネタに自虐して無理に笑って振舞っている様子が垣間見えていじらしかった。
それに敦からナナちゃんの話を聞く度にどんどん興味を持って、話しかけてみるも彼女は何故か挨拶だけして俺から逃げてしまう。
俺が声をかけると大抵の女の子は嬉しがるのに。
…逃げられると追いたくなる男の性が発揮され、益々彼女を知りたくて今日海に来たのにこの様だ。
「気になるくらいなんですよね?だったら別にいいじゃないですか!?」
後輩も俺に詰め寄って上目遣いで見上げるも、特に可愛いとも思わない。寧ろ、その作られた表情に虫酸が走る。
「いや、俺は君達の事はどうでもいいんだ。…だからそこをどいてくれるかい?」
俺は冷たく言い放つとやっと彼女達は俺の前をどきナナちゃんの元へと向かう。
けどレジャーシートに視線を移すとそこにナナちゃんはおらず、代わりに海で泳いでいた筈の敦が頭を抱えていた。