第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】
ーSide 氷室ー
俺は色んな女の子達に囲まれて困っているのに、敦は勝手に1人で泳いでマイペースに遊んでいるし、劉は嫉妬していじけて敦の元に行ってしまい、もうタジタジになっていた。
「ねぇ〜氷室君ってば!!」
「氷室先輩!」
「ちょっとお兄さん。早く誰と遊ぶか決めてよ〜ん」
あぁ、いい加減にしてくれよ。俺だってこの場を抜け出して早く遊びたいのに。
さっきは皆で遊ぼうと提案してみたけど、彼女達は俺と二人きりになりたいらしく全然引き下がってくれない。
それにこの子達は自分達の自慢の身体を俺の腕や背中に押し付けてくる。
…正直悪いけど、興味のない女の子の身体で興奮するほど俺は安くない。
さぁて、この場をどう乗り切ろうか?
俺は適当に相槌を打ちながら、策を考えているとレジャーシートの上で1人座っているナナちゃんの姿が目に入る。
…あの子は一体何で1人でそんな所にいるんだ?折角皆で海に来てるのに。それに女バスの子達は彼女の事を何とも思わないのか?
「なぁ、あそこにいるのナナちゃんじゃないか?どうして1人でいるのか知ってる?」
俺はナナちゃんと同い年の女の子に尋ねると、彼女は面倒臭そうに答えた。
「さぁ?別に1人でいたきゃいいんじゃないんですか?」
「そうよ、氷室君!!あいつ、デブだから体型気にしてんじゃないの?なーんでここ来ちゃったんだろうね?」
「お兄さん、そんな卑屈なデブ気にするなんて優しいんだね。ますます好きになっちゃいそう」
あろうことか俺を囲む女達全員がナナちゃんをチラ見しては馬鹿にする。
彼女はそんな見苦しいほど太っているわけじゃないのにな。寧ろ、glamorous(グラマラス)で魅力的だと思うけど。
…どうやらこの子達、顔とスタイルはよくても性格はよろしくないな。ちょっとお灸を据えておこう。
俺は目を鋭くして彼女達を睨むと、俺を不思議そうに見つめてきた。