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君がいた夏

第3章 譲れないマシュマロ【氷室辰也&紫原 敦】


「ナナちーん、一緒にカキ氷食べよーよ」

カキ氷を差し向けた犯人が私の隣に来て座る。
この気だるそうな声で誰かは検討がついてるけど、一応横を向いて確認する。

…やっぱり紫原君だった。


紫原君とは同い年なんだけど初めて会った時はあまりにもデカくて恐いに尽きた。


それに先輩はおろかあの荒木監督にも敬語を使わないもんだから非常識極まりないとも思ったし、第一印象は最悪だった。


けど、私がよく行く駄菓子屋さんで毎日のように遭遇して彼の意外な一面を垣間見るようになり、そっから段々絡むようになり怖いとは思わなくなる。

そしてデブな私を非難しないところが何よりも心地よかった。


「紫原君こそ、一体どうしたのよ?皆で遊んできなよ!」

紫原君はカキ氷を頬張りながら答えた。


「んー。結構泳いできたし、疲れたから一休み〜。それより、カキ氷好きっしょ?食べなってー」


…紫原君が他人に食べ物を譲るなんて初めてで私は内心かなり驚いている。満腹食べても、私が食べきれないお菓子をヒョイパクするくらい食いしん坊なのに。


一体どんな風の吹き回しなんだろ?


私は怪訝な表情で彼に尋ねてみた。


「紫原君が食べ物分けるなんて珍しいじゃない。一体どうしちゃったの?」

彼は何故か恥ずかしそうに目を俯く。

「…だって、ナナちんいつもお菓子くれっから。そのお礼〜」


おぉう!あの紫原君がなんかデレた!いつもなら、意地はって誤魔化すのに。


それに私の大好きなイチゴシロップのカキ氷が私の目の前で食べて欲しいとキラキラに輝いていて、もう我慢ができず遠慮なくもらうことにした。


「そうね、いつもあたしがあげてばっかだし。じゃあ遠慮なくいただきまーす!
…うーん、んまぁい!!ありがと、紫原君!」

ちょうどお腹空いてたから、余計美味しく感じて舌が唸り彼に笑顔を向けてお礼を言う。


「でしょ〜?やっぱりナナちんは甘い物に目がないね〜」

彼は喜ぶ私を見て顔が綻んでいた。

「だって、好きなんだもん」

私が口を尖らせていじけると紫原君はいきなり目を鋭くして真面目な質問をしてきた。


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