第2章 爪痕【赤司征十郎】*裏あり
翌日の部活終わり、体育館の鍵を職員室に返して帰路につこうとしたところ途中の音楽室から洗練された美しいバイオリンの音色が聞こえてきた。
もう外は真っ暗だぞ。校舎には誰もいないのに一体誰がいるんだ?
俺は好奇心で音楽室の扉をノックした。するとバイオリンの音は止み、聞き覚えのある声が中から聞こえてきた。
その声の主が扉を開ける。
なんと、そこにナナとそっくりな美少女が現れた。
…どうやらこの少女が爺やの言っていたナナの妹に間違いない。
彼女は俺を見て目を見開き驚いている。
「貴方は赤司君!?どうしてこんな所に?」
「あぁ、そうだ。綺麗な音色だったからつられてしまったんだよ。君は葛城さんだろ?」
「はい。私の事をご存知なんですか?」
しかも声もそっくりであり、まるで少女時代に戻ったナナと話しているようで、思わず顔がニヤつきそうになる。
おまけに俺の事まで知っているなんて嬉しい事この上ない。
だが、そんな顔をしては怖がられてしまう。必死で俺は微笑みを作った。
「あぁ、勿論だとも。それに俺の方こそ君みたいな可憐な女性に知ってもらえてるなんて、光栄だな。」
すると彼女は頬を赤らめ、両手で顔を抑える。
「…いえ。そ、そんな。私の方こそ赤司君みたいな素敵な男性にそんな事を言ってもらえるなんて恐縮です…!」
彼女はナナにそっくりなものの、年相応の少女らしいあどけなさがある。
それに純粋なナナを見てるみたいでとても愛らしく可憐だ…。
ナナにもこんな時代はあったのだろうか?あの夜からは想像もできないが。
「ここで立ち話を続けるのもなんだ、君のバイオリンを聞かせてくれないか?」
彼女は大きな目を輝かせ嬉しそうに了承し、俺を音楽室へ招き入れた。